まず、マーケティング=広告じゃないです。

わたしもずっと、マーケティングって「広告を作る仕事」だと思ってました。違うらしいです。誰の、どんな困りごとを引き受けるかを決めて、商品も値段も売り場も言い方も、買ったあとの気分まで全部そろえる作業のこと。広告はそのうちの一個でしかない。だから広告だけ上手くても、使うたびにガッカリさせる商品は、そのうち誰も買わなくなります。当たり前なんですけど、忘れがち。

あなたが買ってるのは、商品じゃなくて3つの価値です。

……って言うと胡散臭いんですけど、要はこういうことです。

どんな価値わたしの場合仕事で言うと
機能的価値(できること)肌の手入れがラクになる性能、時短、使いやすさ
情緒的価値(感じたいこと)自分を大事にできてる感じ安心、楽しさ、自信
社会的価値(見せたいこと)美容好きの友達と話せる所属してる感じ、自分らしさ
「軽い」だけでは、買う理由になっていない
STEP 1 ─ 特徴軽い(280g)
事実。ここで止めると、他社が「270g」と言った瞬間に負ける。
STEP 2 ─ 便益持ち運びがラク
その特徴で、何ができるようになるか。ここでやっと比較の土俵に乗る。
STEP 3 ─ 生活での意味出かけるのが億劫じゃなくなる
その人の一日がどう変わるか。ここまで来ると、価格の話が後ろに下がる。

仕様表がSTEP 1で止まっているサイト、本当に多いです。書いてある情報は同じでも、STEP 3まで翻訳されているかどうかで、読んだ人が自分の話だと思えるかが変わります。

で、大事なのはここから。「軽い」は、ただの特徴です。それを「持ち運びがラク」に翻訳して、さらに「出かけるのが億劫じゃなくなる」まで持っていく。ここまで来てやっと、買う理由になります。逆に、情緒のほうだけ盛って商品がスカスカだと、一回でバレます。バレたあと、二度と買いません。わたしはそう。

「安いほうがいい」って答えた人が、高いほう買うんですよ。

アンケートで「価格重視です」って答えた人が、レジでは好きなブランドを選ぶ。よくあります。わたしもやります。だから、言ったこと・やったこと・買ったときの状況を、セットで見ないと意味がない。人が矛盾するのは、雑に決めつけていい理由じゃなくて、調べる入口です。

で、その商品に何を「代わりにやってほしい」の?

ここでJTBDっていう考え方が出てきます。Jobs to Be Done、直訳すると「片づけるべき用事」。要するに、お客さんはドリルが欲しいんじゃなくて穴が欲しい、ってやつです。

ウーバーイーツを頼んだ日、わたしが金を払ったのは食べ物じゃなくて「今日はもう献立を考える担当から降りる権利」でした。配送料が高いのは知ってます。知ってて払ってます。そう考えると、比較相手は他のデリバリーアプリだけじゃない。コンビニも、自炊も、「食べずに寝る」も、全部ライバルです。

言葉どういう意味よくある事故
セグメント似たニーズの人のかたまり年齢が同じだけで同じ人扱い
ペルソナ大事なお客さん像を具体化根拠なく趣味と性格を盛る
インサイト行動の裏にある本音の仮説思いつきを事実として扱う
JTBDその状況で何を片づけたいか結局、機能一覧に話が戻る

聞くなら「買いますか?」じゃなくて「前回どうしました?」。

未来の話を聞くと、人はいい子ちゃんの答えを言います。過去なら嘘をつきにくい。きっかけ、何と比べたか、何で迷ったか、最後の決め手、使ったあとの感想。この順で聞く。買った人だけじゃなくて、買わなかった人と辞めた人にも聞く。むしろそっちが本番です。

あと、数人が同じことを言ったからって「市場の8割がそう」にはできません。それはヒントであって、証拠じゃない。誘導せずに、相手の言葉と具体的な場面をそのまま残しておいてください。

YOUR TURN / 仕事に置き換える

この前買ったものを一つ選んで、「いつ/どんな状況で/何を避けたくて/何を得たくて/買わなかったらどうしてた」を書き出す。恥ずかしいけど、これが一番効きます。

身近な例と実務の提案は、本サイトによる説明用の仮説です。人物の発言は架空で、調査回答や利用者の証言ではありません。

この章の出典・参考資料(3件)